農水省は、農業者が良質かつ低廉な農業資材を調達する際の参考となるよう、また、国内外における農業資材の価格等の調査を実施している。その結果、農薬やマルチなどの被覆資材の価格差は2〜5倍になることがわかった。
農水省は国内の調査では、農薬や被覆資材などを販売している店舗776店に対して肥料・農薬等の主な銘柄についての販売価格の調査を実施し486店舗から回答を回収した。調査資材は肥料、農薬、被覆資材、段ボール、コメ紙袋、農業用ハウス。
海外においては、各農業資材について、公的機関による公表資料や民間企業等の公表データによる文献調査を行い、比較可能な銘柄等を選定。そのうえで資材の選定、価格の調査に当たり、担い手農業者等による対象国の農業者、資材小売業者、研究機関等への聞き取り調査等を実施した。
国内における調査結果
肥料
表を見ると各肥料において価格差は2〜3倍程となり、特に単肥の硫安については最安値が800円で最高値が2,322円と約3倍の開きがあった。硫安の販売平均価格は20kgで1,157円となっており1,100円〜1,199円の価格帯で販売している店舗が最も多かった。
農薬
農薬については最安値と最高値の価格差が約2倍という結果になった。
被覆資材
被覆資材とはマルチや露地トンネルなどを指す。被覆資材は2倍から最大5倍と価格差が非常に大きくなった。ポリオレフィン性のハウス資材は最大5倍の価格差があり、1mあたり1,400円〜1,599円で販売している店舗が最も多くなった。
価格差が生じている理由
あくまで店頭での売価であるため、企業努力や銘柄の違いと言えばそれまでだが、店舗によっては銘柄を絞り大量仕入れをしたり、会員割引などをしたりして安く販売しているケースも見受けられた。また価格差だけでなく、畑までの配送料を無料にしたり、土壌診断を安価に提供したりするなど価格以外でのサービスを実施している店舗もあった。
そのため、店舗によって価格差はあるが、普段使っている肥料や農薬が平均と比べて高いのかどうか?という判断の参考になれば幸いである。しかし、価格以外のサービスを提供している店舗もあるため、価格やサービスなどを踏まえて検討して、場合によってはネットで別店舗から仕入れるということも検討しても良いだろう。
海外における調査結果
海外での農薬や農業資材の価格差を調査した。調査対象国は稲作の盛んなアメリカ、イタリア、中国である。ただしアメリカ、イタリアは1稲作経営者の平均作付面積が約250ha、約56haと日本の平均作付面積が2haよりはるかに大きいため生産状況が大きくことなる。更に肥料や農薬等の市場規模もそれらの国は日本よりも大きいためその点も異なってくる。
中国については日本の物価を100としたときに中国の平均物価は58となるため物価の違いもある。そのため純粋な比較は難しいものの参考値程度までに各国の価格調査結果を公開している。
アメリカ
トラクターなどの農業機器はほとんど変わらないものの肥料や農薬については日本の価格の半分程度となっている。前提にあるように作付面積が日本の100倍以上あるため1稲作経営者が大量購入することができるという点でも価格差が生まれている。
イタリア
イタリアもアメリカと同じく農業機器の差は2割程度しかないものの肥料や農薬の価格は日本の半分程度となっている。こちらも作付面積が大きいため大量購入による価格差の違いが生じたものと考えられる。
中国
中国は日本の5〜7割程度と日本より安価であるが物価の違いを考えると実質的な差はほとんどなくなっている。更に中国は近年有機農業の市場が拡大しており、それにともなう有機肥料の市場も拡大している。
海外の事例を比較した場合、農業を取り巻く環境が異なるため一律での比較は難しいものの、近年進む日本農地の集約化により1経営農家の作付面積が増える場合、海外の事例も参考値にはなってくるもと考えられる。
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