本記事は食の探求「食探」からの寄稿記事です
米油は玄米を精米するときに出る米ぬかを絞って作られる油で、国内原料のみで生産できる植物油として知られています。昨今米油は人気の油となり、消費量が増加している一方で、米の消費量が減っている昨今の状況から、原料となる米ぬかの確保が難しくなってきているという状況が続いています。米油と米の消費量の関係は切っても切れない関係にあり、今回は農ledgeさんに対して米の消費量と米油の関係について記事寄稿をさせていただきます。
米の生産量と消費量
米油の現在量となる米ぬかは、玄米を精米したときに発生するため、米の生産量と、精米量、消費量によって決定します。まずは近年の米の生産量と消費量について確認をしていきましょう。
米の生産量は、1970年の1,253万トンをピークに減少しており現在は770万トンほどにまで減少しています。その背景には、減反政策という政策があり読んで字のごとく、田んぼの生産面積を減らすという政策です。世の中で販売されるものは需要と供給によって価格が決定しますが、米を大量に生産すれば米が余ってしまい米の価格が落ちて、生産者さんの生活が成り立たないということを理由に生産量を調整し、田んぼではなく畑に転換して他の作物を作ることに対して補助金を出すなど政府主導で生産量を調整してきました。そのような政策もあり、米の生産量は徐々に減っていきました。2018年にこの政策は終了しており、減反政策を行っている最中に小規模面積でも収益が得られるような高単価なブランド米の開発や生産が行われるようになったことが中止の理由とされています。しかし、現在も急激な生産量の増加による価格下落を起こさないように、自治体、農協、各団体を中心に地域ごとに調整を行っている状況です。
しかし、政策は終了しても、1970年以降米の消費量は落ち続けています。1970年には1人あたりの年間米の消費量は約95kgあったのに対して現在は約50kgと半分程度までに減少しています。パンや麺などが米の代替となっという説や、肉や油など米以外の接種カロリーが増えたことにより米の消費量が減ったという説もあり、消費量の減少理由は複合的な要因が重なったと考えられます。
米の精米量と米ぬかの確保状況
米の生産量と消費量が減れば当然のことながら米の精米量は減少し、発生する米ぬかの量も減少していきます。米ぬかを絞って米油として一般家庭で利用され始めたのは昭和30年頃からとされています。その後とある事件により、一時的に米油の消費量は落ち込みますが、その後消費量は回復し拡大していきます。昭和30年頃は減反政策はなく米の生産も増加傾向にあったため、米ぬかの確保は容易だろうと思われがちですが、実は当時から米ぬかの確保は難しい状況にありました。それは、米ぬかは非常に有用な副次産物で、しいたけ栽培の温床や、飼料、肥料などに用いられており、市場的には米ぬかの取り合いとなっていたのです。そしてその構図は現在も変わらず、年間発生する米ぬかの量は約65万トンで、そのうち米油用に使用される米ぬかは35万トン弱と、他業界との取り合いになっているのです。
しかし、それに対して更に都合が悪いことが起こります。それは近年発生した新型コロナウイルスです。新型コロナウイルス発生により飲食店などは休業や時間短縮営業が求められ、飲食店での米需要が一気に減少しました。米は在庫する際、玄米(精米する前の籾殻がついた状態)で在庫をするため、米は在庫としてあるのですが、精米がされない、つまり米ぬかが発生しない状況となり、米ぬかの確保がますます難しくなりました。
さらにさらに、ウクライナ戦争が発生しました。ウクライナは植物油の原材料であるひまわり、菜種の生産が盛んな国で供給が安定しないことから、各国他の植物油に代替を求めるようになり、米油もまたそのターゲットとなりました。ヨーロッパ各国ではオリーブオイルが代替しオリーブオイルの価格は高騰しましたが、アジア各国では米油の需要が高まりました。特にアジア各国は自国で米を生産をしている国が多く、米ぬかや米油を輸出せず自国への消費を優先させることから輸入による入手も難しくなりました。
このように米の生産、消費量減少、コロナ、ウクライナ戦争と米油は人気になる一方で原料確保が難しくなってきている油の1つと言えます。
今後の米油
米ぬかの原料確保が難しくなってきている昨今の状況から各米油メーカーは米の生産地近くに米油を絞る工場を新設したり、まだ米ぬかを産廃処分している米事業者や米農家を周り少しでも多くの米ぬかを確保できるように経営努力を続けています。
今後米の消費量と生産量が劇的に増加することが考えにくいですが、米油は日本の米事情を色濃く反映する油と言えるでしょう。
寄稿元
食の探求メディア 【食探】
https://shokutan.com/