地理的表示(GI)保護制度 GIマークとは

GIマーク

 ここ数年、認証として認知されてきているGIマーク。普段気にせず口にしているものもGIマークの認証を受けているものであることも少なくない。GIマークは有機JASやハラール認証とも異なる認証制度であり、今回はそのGIマークについて解説する。

地理的表示(GI)保護制度とは
 地理的表示(GI)保護制度とは、夕張メロンやつるたスチューベン、市田柿など地域のブランドになっている商品の名称を保護するものである。地理的表示(GI)保護制度の認証を受けた商品のみGIマークをつけることが可能となる。つまりGIマークは地理的表示(GI)保護制度の認証を受けた商品であることを証明するものである。
 
 地理的表示(GI)は一般的に夕張メロンのように地域名×商品名称となることが多いが、「すんき」のように地域名がついていないこともあり、命名においては特にルールは存在しない。また農作物だけでなく、神戸ビーフや下関ふぐのように肉や魚、三輪素麺などの加工品、伊予生糸のような食品以外も対象となっている。

 地理的表示(GI)保護制度については農水省で下記のように定義されている。
地域には長年培われた特別の生産方法や気候・風土・土壌などの生産地の特性により、高い品質と評価を獲得するに至った産品が多く存在しています。これら産品の名称(地理的表示)を知的財産として保護する制度が「地理的表示保護制度」です。
 つまり、その地域で長年生産され、認知されている商品がその対象となる。ただし、必ずしもその地域内で作られているものだけが対象となるわけではなく、歴史歴に見てその地域とのつながり等があると判断される場合は、その地域外で作られたものも対象となることがある。

 2015年12月22日にあおもりカシス、神戸ビーフなどが登録され、2019年5月の時点で79品目が地理的表示(GI)保護制度の認証を受けている。
  地理的表示(GI)保護制度はその品目の生産もしくは加工業者の団体が農林水産大臣に当てて登録の申請を行う。申請があると、農林水産大臣がその内容を確認し認証を出し、その後も登録を受けた団体が、登録された基準に基づき生産が行われるよう品質管理を実施する。この認証を受けずにGIマークを勝手に使用した場合、罰則の対象となる。

地理的表示(GI)保護制度が始まった背景
 地理的表示(GI)保護制度は100年以上前、フランスにおいてボルドーワインの偽物が多く流通したことから、生産者の地名ブランドを守るために作られた法律が原型になっている。
 日本国内においても、その地域で作られていないにも関わらず、夕張メロン、神戸ビーフなどの名称で商品を流通する事例が散見されている。また国内の流通だけに限らず、海外にもそれら商品が流通しているということも確認されている。
 地域ブランドが勝手に使用され、その地域外の販売者が不当に利益を得るだけでなく、きちんとした品質管理が行われないために、地域ブランドそのものが損なわれる可能性もある。
 しかし、国内において地域ブランドを保護する法律等がなく、また不正に地域ブランド名を使用している商品に対して取締が十分にできていなかった。

 そのような背景を受け、地理的表示(GI)保護制度が整備された。地理的表示(GI)保護制度の認可を受けていない状態でGIマークを使用した場合は罰則の対象となり、農林水産大臣の認可を受けた生産団体および加工業者のみがGIマークの使用を許可されている。

GI制度に期待されること
 GI制度の取得には大きく3つのことが期待されている。1つ目は輸出拡大である。GI制度は世界的な制度であることから、GIの認証を受けていることでその商品に対して好意的にとらわれることが多いという。特にEUはGI制度を早く導入していることからその認知度も高い。例えばタイは日本より早く2003年にGI制度を導入しているが、ジャスミン米などのタイの名産品がEUでも好意的に評価されたという事例がある。
 2つ目は観光業の振興である。GI制度を取得している商品の名前の多くには地域名が入っていることから、その地域名の認知にも一役買っている。海外の事例では人口数百人のロックフォールはチーズの生産が有名で、年間20万人以上の観光客がチーズを求め訪れるという。
 最後、3つ目は品種の保存である。例えば農作物についてはその地域のみで作られる固定種や在来種なども存在する。しかし、近年の農家減少もあり、それら固定種や在来種を維持していくことも難しくなってきている。そこでGI制度により認証を受け、需要量が高まれば、生産する団体や農家も増えそれら品種の保存にもつながると言われている。フランスではブルー・デュ・ヴェルコール=サスナージュというチーズがGI登録され、絶滅の危機であった在来の乳牛の価値が再認識されたという事例も報告されている。

まとめ
 GI制度は、有機栽培されているとか、味が良いということを保証するものではなく、あくまでその地域で伝統的に作られているものに対して認証を与えるものである。そして認証を受けた商品は、GIマークをつけることが認可され、その地域で作られ基準を満たしていることを証明している。
 GI制度を受けることで、生産者や加工業者はその地域ブランドを保証されるだけでなく、観光業や輸出拡大など、地域創生につながる可能性を持っている。現在、国内においては登録は100種類未満(2019年5月時点)であるが、今後のオリンピック等に向けて更に登録数が増えると期待されている。

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