養豚や乳用牛・肉用牛生産がもたらす環境負荷はもっと小さいことが判明

養豚の様子

現場実測データにより、尿汚水処理による温室効果ガス排出量の推定値が従来より41%少ない値に

 20日農研機構は養豚や乳用牛、肉用牛の汚水処理過程で発生する温室効果ガス(一酸化二窒素とメタン)の量を算出したところ、従来の算出結果が過大に評価されており、実測値に基づく算出では従来よりも年間排出量が60万トン(41%)少ないことが分かったと発表した。今回算出した一酸化二窒素およびメタンの排出係数は、国の新たな基準として採用される予定。

 畜産由来の温室効果ガス排出量は、日本の農業由来の温室効果ガス排出量の41% を占めていると推定されていた。一方で、家畜排出物由来の温室効果ガス排出量は実験室内データに基づく推定されていたこともあり、実際の数値との乖離が懸念されていた。そこで農研機構は、共同研究機関と連携し、豚と牛の生産における排泄物由来の温室効果ガス(一酸化二窒素とメタン)の排出係数を実際の浄化施設で測定したデータを元に算出した。
 一酸化二窒素は二酸化炭素の約300倍の温室効果を持つ強力な温室効果ガスであり、オゾン層破壊の原因物質でもあるとされており、化学肥料や家畜排せつ物に含まれる窒素から発生するため農業が最大の人為発生源となっている。メタンは二酸化炭素の25倍の温室効果を持つ強力な温室効果ガスであり、反すう家畜や水田からの排出が大きいとされている。

 今回の実験の結果、今まで排出されていたとされる量よりも約60万トン(41%)、温室効果ガスの排出が少ないことが分かった。すなわち、養豚や乳用牛・肉用牛生産がもたらす環境負荷は従来よりも低いことが判明した。また実際の浄化施設のデータを元に算出されたもので、従来の数値よりも正確なものとされている。

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