製パン適性に優れた寒冷地向け小麦新品種【夏黄金】を開発

食パン

農研機構(東北農業研究センター)は東北・北陸地域向けのパン用小麦品種「夏黄金(なつこがね)」を開発育成したと発表した。

夏黄金は東北・北陸地域で主にパン製造のために生産される「ゆきちから」よりもパン生地の力が強く、「ゆきちから」では難しかった食パンの製造にも向いている。また穂発芽しにくく、赤かび病にも比較的強い品種とされる。

東北・北陸地方では平成14年よりパン製造に向いた小麦品種として「ゆきちから」が多く生産されてきた。
ゆきちからは東北141号とさび系23号を交配した品種で、高蛋白・パン加工適正が高い品種であり、平成26年岩手県ではナンブコムギに次ぐ第2の生産量で1,316haが作付けされている。

一方で、ゆきちからは準強力小麦のため、製造できるパンの種類が限定され、食パンなどの製造には向いていない。
また収穫時期に降雨が続くと収穫前に発芽してしまい、小麦としての品質を著しく下げる「穂発芽」がしやすく、赤かび病(学名:Gibberella zeae (Schweinitz) Petch (Fusarium graminearum Schwabe) )が発生しやすいというデメリットがあり、ここ数年は生産量が頭打ちになっていた。

そのような背景を受けて農研機構が、タンパク質の組成を改良してパン生地の力を強くし (強力小麦)、「ゆきちから」より穂発芽しにくく、赤かび病にやや強い新品種「夏黄金」を育成した。

夏黄金はゆきちからよりも高い製パン適正を示し、ゆきちからでは難しかった食パンの製造にも適しており、多くのパンの製造に向いている。またしゆきちからに準じた栽培が可能で、生産量もゆきちからと同程度である。また草丈がゆきちからよりも低いことが特徴的。

夏黄金の製パン特性

栽培適地は東北・北陸地域の平坦部で、雪害に対する強さは連続積雪日数 (根雪期間) が100日以内の地域で栽培が可能。
積雪日数が100日以上の地域では、融雪剤や雪害防除のための薬剤の使用が必要となる。また赤かび病に対してはゆきちからよりも強くなったものの、薬剤防除は必要になる。

宮城県では夏黄金が奨励品種に採用されおり、「夏黄金」の小麦粉や生産品は平成31年より流通予定。