農研機構は、水稲の多収品種が持っているもみ数を増やす遺伝子を「コシヒカリ」に交配すると高CO2(二酸化炭素)濃度条件下で収量が大幅に増加することを明らかにしたと発表した。将来的にCO2が増加した環境下でも多収量が期待できる。
大気のCO2濃度は、18世紀後半の産業革命以前には概ね280ppm程度であったが、それ以降上昇を続け、2015年には400ppmに達し、今後、更に上昇すると予想されている。
全国地球温暖化防止活動推進センターによれば、産業革命以降化石燃料エネルギー(石油、石炭、天然ガスなど)の使用量が増えたことや、都市の広がりにより森林面積が減ったことが主な要因とされている。
植物にとって待機中のCO2濃度が上昇すると光合成が盛んになり、より大きくなったり、実を多くつけたりすることが知られている。稲作においても収量や生育が高まることが知られており、「タカナリ」等の多収品種は、一般の主食用品種に比べ籾数が多く、空気中のCO2濃度が上昇すると増収しやすいことが明らかになっている。しかし、CO2濃度が上昇した際に、籾数だけでなく、それ以外の部分(例えば葉など)の生育にも影響が出ることから、CO2濃度が籾数に影響を与えるメカニズムまでは解明されていなかった。
そこで農研機構では、水稲の多収品種が持っている籾数を増やす遺伝子を「コシヒカリ」に人工交配で導入した系統(籾数以外は「コシヒカリ」のままの系統)を高CO2濃度条件下で栽培し、その収量や生育を調べた。
「タナカリ」が持つ籾数を増やす遺伝子APO1をコシヒカリに導入し、CO2濃度が高い環境化で栽培試験を行った。その結果、APO1を持つコシヒカリはCO2濃度が高い環境化で収量が14%増加するといった結果を示した。この結果により、APO1はコシヒカリに導入した場合でもCO2濃度が高い環境化で収量を増加させる遺伝子であることが明らかになった。今後CO2濃度が上昇することが予想されるが、そのような環境でも収量を増加させることができる技術としてより研究されることが期待される。
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