黒穂病などの病害に強く倒伏しにくい飼料用サトウキビ新品種「やえのうしえ」を開発

サトウキビ

 6日農研機構は、黒穂病抵抗性が極強で耐倒伏性に優れる飼料用サトウキビ「やえのしろ」を開発したと発表した。土地面積が限られる南西諸島の畜産農家に向けた自給飼料の増産に役立つと見られている。

 日本における飼料の自給率はここ30年近く25〜30%以下で推移しており、他国の生産状況や飼料の輸入価格、燃料費、為替等の変動により飼料価格も変動している。その変動は、畜産農家の生産コストに大きく影響があり、安定した飼料を確保するために農水省を始め各関連機関が飼料の確保や国産飼料の開発研究などを行っている。農研機構でも、国産飼料に向いた品種の研究開発を盛んに行っており、様々な品種を世に送り出してきた。

 特に、肉用牛の繁殖経営が盛んな南西諸島では、畑の面積が限定されることや、台風や干ばつなどの被害を頻繁に受けることが粗飼料確保の上で課題となっている。これまでに農研機構は、南西諸島で普及している既存の飼料作物(牧草)であるローズグラスよりも多収となる飼料用サトウキビ「KRFo93-1」「しまのうしえ」を育成し、普及を進めてきた。しかし、「KRFo93-1」はさび病類の発生、「しまのうしえ」は収穫時期が遅れた際の倒伏が課題となっていた。また、特に沖縄県についてはサトウキビ最重要病害である黒穂病の発生地帯であるため、罹病した株からの黒穂病菌が他のサトウキビ畑へ拡散する懸念は常にある。こうしたなかで両品種とも黒穂病への抵抗性をさらに高めることが求められていた。

 そこで今回、耐病性と耐倒伏性に優れる飼料用サトウキビ新品種「やえのうしえ」を育成した。「やえのうしえ」は国内に自生するサトウキビ野生種を利用して育成した初めての品種で、製糖用サトウキビ品種「農林8号」を母(種子親)、黒穂病抵抗性が極めて高い国内自生のサトウキビ野生種「西表8」を父(花粉親)とする品種である。

 「やえのうしえ」は黒穂病抵抗性が「KRFo93-1」「しまのうしえ」よりも優れる「極強」、さび病やモザイク病に対する抵抗性が「強」を示す。更に鹿児島県奄美地域及び沖縄県向け品種「しまのうしえ」に比べ、耐倒伏性に優れている。

 今後は種子島などの鹿児島県熊毛地域においては「KRFo93-1」の代替品種として、奄美・沖縄地域では機械収穫を前提とする大規模営農組織を中心に「しまのうしえ」の代替品種としての利用が期待される。また、黒穂病やさび病などの病害抵抗性に優れるため、病害発生が懸念される畑での活用が期待されている。

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