高温でも濃赤色に着色しやすく、食味も良い リンゴ新品種「錦秋」を発表

リンゴ

 12日農研機構は夏温暖なリンゴ産地でも果皮が濃赤色に着色しやすく、甘味が多く歯ざわりの良い中生のリンゴ新品種「錦秋」を育成したと発表した。地球温暖化に伴い、中生品種であっても、気温が高い状態のまま収穫時期を迎えることが増え、着色不良が発生しやすくなっていますが、「錦秋」は、このような条件下でも着色しやすいだけでなく、甘味と酸味のバランスが良く、肉質が緻密で食味良好となっている。

 作物には収穫時期によって早生、中生、晩生と3つに分類され、その作物の収穫シーズの初めころに収穫されるのが早生、そのあとが中生、最後が晩生となっている。例えばお米であれば、早い時期に収穫される早生のあきたこまち、中生のアキニシキ、晩生のコシヒカリなどである(コシヒカリは中生〜晩生)。

 リンゴにおいても早生、中世、晩生が存在し早生はまだ比較的気温の高い9月の中旬頃から収穫される早生型品種つがるなどが知られている。そこから徐々に気温が下がると中生型のジョナゴールド、晩成型のフジが収穫されていく。

 しかし近年、地球温暖化の影響もあり、なかなか気温が下がらず本来涼しくなってから収穫する中生型のリンゴを気温の高い時期に収穫をする機会が増えている。気温が下がらないことも影響し、特に赤色品種は着色不良が発生し、十分に赤くならないまま収穫されてしまうことが生産地において課題になっている。更に、近年中生型で知られるジョナゴールドの生産量が急激に減少しており、酸味がやや強いジョナゴールドの食味が今の消費者の嗜好性に合っていないからとされている。そのような背景があり、中生型で赤色の着色が良く糖度の高い品種が求められていた。

 そこで、農研機構は、高温条件下でも濃赤色に着色しやすく、甘味が多く歯ざわりも良い中生リンゴ「錦秋」を育成した。着色しやすいことから、東北地方南部以南の温暖なリンゴ産地でも外観の良いリンゴを容易に生産することができる。肉質が緻密で歯ざわりが良いことに加えて、糖度が高く適度な酸味もあるため、食味が濃厚となる。
 「錦秋」は「いわかみ」と「つがる」の交雑種で9月下旬から10月上旬にかけてで、「シナノスイート」よりも2週間程度早く収穫ができ、果実の重さは300g程度で「シナノスイート」よりも60g程度小さくなる。またさびの発生が少ないことも特徴。
糖度は15%前後で中生品種としては高く、酸度は0.3~0.4g/100mlで、「シナノスイート」よりも高く、室温での日持ちは10~14日程度で、「シナノスイート」とほぼ同程度となっている。