ニホンミツバチのフルゲノムを解読

ミツバチ

 農研機構、東京農業大学、京都産業大学は共同で、ニホンミツバチのフルゲノム配列の解読に成功したと発表した。ニホンミツバチは、一般に飼養されているセイヨウミツバチと比べ、病気に強いなど有用な性質を持っている。今回解読されたニホンミツバチのゲノムをセイヨウミツバチのゲノムと比較することで、両種の病気に対する抵抗性などを遺伝子レベルで解析が可能となる。

 ミツバチは、蜂蜜などの蜂産品の生産や、作物の受粉に活用できる、農業上とても重要な昆虫である。その価値はアメリカだけでも20億ドルと試算されており、日本でも施設栽培のイチゴなどの受粉に8万群以上が活躍している。
 国内で農業用(養蜂やポリネーターとして)に利用されるミツバチの多くはセイヨウミツバチで、家畜として長年にわたって改良が進められ、高い貯蜜能力などの優れた性質を持っている。しかし、近年、病気や寄生虫(ダニ)の蔓延、農薬への曝露等に伴う蜂群の弱体化が問題となっている。

 一方で日本固有の品種であるニホンミツバチはセイヨウミツバチと比べると生産性に劣り、また環境が少しでも変化するとその場を離れてしまうということから養蜂用としての利用は件数が減ってきている。しかし、ニホンミツバチはアメリカ腐蛆病やヘギイタダニなどの病気や虫に強いという性質をもっており、この性質を利用しセイヨウミツバチを改良しようとするアイデアこそあったものの、セイヨウミツバチとニホンミツバチは交雑せず、その実現には至っていなかった。

 2006年にセイヨウミツバチのゲノムが解析されると、2015年に韓国、2018年に中国でトウヨウミツバチのゲノムが解析された。日本でも2016年にニホンミツバチのゲノム解析を始め、2019年そのゲノムが解析された。

 今回、ゲノムが解析されたことにより、セイヨウミツバチやトウヨウミツバチとゲノムの塩基配列を比較することで、それぞれの種の病気に対する強さを遺伝子レベルで解明することができようになった。
 今後、遺伝子レベルでの解析を続けることで将来的には遺伝子組換技術やゲノム編集の技術に応用され、より病気に強いセイヨウミツバチが完成するかもしれない。

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