ニホンナシの発芽不良の原因が地球温暖化の影響による「凍害」であることが明らかに

樹になる梨

 19日農研機構は九州各地で増加しているニホンナシ(主に幸水)の花芽の枯死による発芽不良の主要因が、凍害であることを明らかにした。温暖化により、秋〜冬の気温が高いと、花芽の耐凍性が十分に高まらず、冬の寒さで凍害を受けるとのこと。それに対して、秋〜冬の慣行の堆肥や肥料の散布を翌春にずらすことで、花芽の枯死率が大幅に改善できることも明らかになった。

 九州各地では露地栽培におけるニホンナシ(主に幸水)の花芽の枯死による生育不良が問題になっていた。ニホンナシは秋〜冬にかけて気温が下がるにつれ、耐凍性徐々に高め、真冬に最もその耐凍性を高める落葉広葉樹であることが一般的に知られている。しかし、近年の地球温暖化により、秋〜冬の気温が下がらず、ニホンナシの耐凍性が十分に高まらず、生育不良が発生することが以前より知られていたが、その詳細についてはあまり知られていなかった。

 そこで、農研機構は凍害の発生している鹿児島県と、凍害の発生していない茨城県のニホンナシを調査した。調査の結果、鹿児島県のニホンナシの凍害発生危険温度は-6℃であり、鹿児島の最も気温の低くなる1-2月の最低気温とほぼ同じであった。一方、茨城県のニホンナシの凍害発生危険温度は-16℃と、茨城県の1-2月の最低気温-9℃よりも高く、茨城県のほうが耐凍性が高いことが分かった。
 
 ニホンナシは秋に施肥を行うと、発芽不良の発生が軽減することが知られている。そこで、秋〜冬における花芽の窒素含量と耐凍性の関係を調査した結果、窒素含有量が高いほど耐凍性が低くなることが分かった。そこで、実証試験を行ったところ、秋の施肥をやめ翌春に施肥時期をずらすことで花芽の枯死による生育不良の発生が大幅に軽減することが明らかになった。

 この結果から、ニホンナシに対する施肥時期を秋から翌春にずらすことが推奨される。また農研機構が同実験を5年にわたり行った結果、施肥時期を翌春にずらし場合でも樹勢や果実品質に影響はなかったとのこと。

発芽率と施肥・堆肥の関係

▶用語解説
凍害発生危険温度とは
50%の花芽が凍害を受けて枯死する温度。耐凍性を示す指標として用いられる。凍害発生危険温度が低いほど、耐凍性は高い。

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