八丁味噌、宮崎牛など9種類が新たにGI登録

すいか

 農林水産省は、15日、八丁味噌、堂上蜂屋柿、ひばり野オクラ、小川原湖産大和しじみ、入善ジャンボ西瓜、香川小原紅早生みかん、宮崎牛、近江牛、辺塚だいだい、鹿児島黒牛を地理的表示(GI)として、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)に基づき、登録(登録番号第49号から第58号)したと発表した。入善ジャンボ西瓜は富山県、香川小原紅早生みかんは香川県、宮崎牛は宮崎県、近江牛は滋賀県で初の登録となる。

 地理的表示(GI)保護制度は、地域で長年育まれた特別な生産方法によって、高い品質や評価を獲得している農林水産物・食品の名称を品質の基準とともに国に登録し、知的財産として保護するもの。日本では平成27年6月1日「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」が施行され、「地域ブランド産品」の品質を評価し、産品の名称である「地理的表示」を知的財産として保護していくことを定めた。知的財産を保護することを目的にしながら、有機JASやGAP認証など、県外や海外へのPR効果も期待される。

八丁味噌(愛知県)
赤褐色で色が濃く、適度な酸味、うまみと苦渋味といった他の味噌にない独特な風味を有する。愛知県民の濃い味を好む嗜好と相まって「名古屋めし」の代表的な調味料として定着。愛知県は高温多湿な気候であり、製麹過程で腐敗しやすい自然条件の下で、天保、弘化、嘉永頃(約200年前)には、塩と大豆を用いて安全に味噌作りができる味噌玉作り製法が定着した。気温が高いことにより、熟成において大豆の分解が進みやすい。高温多湿な環境では、塩分・栄養価の高い味噌が好まれた。

堂上蜂屋柿(岐阜県)
非常に大きい干し柿で、平均80gとなる。果肉は飴色で繊維質が少なく柔らかい。糖度は65度にもなる。品質が良く贈答品として高く評価。昼夜の温度差がある盆地型の気候により、高糖度の柿が生産される。干し柿加工の季節は晴天日が多く、かつ朝晩の冷え込みが強いため天日干しの開始時間に屋外の柿が急激に乾燥するのを防ぐ。伝統技法(ニオボウキ)による丁寧な加工行程を経て品質の整った干し柿が完成する。古来から殿上人(堂上)に献上する柿として広く知られている。

ひばり野オクラ(秋田県)
身が大きいにもかかわらず、柔らかいオクラ。多彩な調理方法の料理に使用できる点や、安定した品質が評価されて、他産地オクラの3割~5割程度高値で取引されている。産地は秋田県内でも日照量が多い地域であり、ハウス栽培による温度管理が容易、これにより、オクラの生育に適した温度での栽培が可能。生産者が互いの圃場を巡回しながら栽培技術を改良し、地域として栽培技術の向上を図ってきたため、安定した品質のオクラの生産が可能。

小川原湖産大和しじみ(青森県)
大粒で濃厚な出汁が出るだけでなく、身もしっかり味わえることが特徴のヤマトシジミ。外見も良く、出荷後にも鮮度の良い状態が保持できる。また、しじみ専用の市場で品質がチェックされるため、品質にばらつきがなく安定した品質を維持。小川原湖は、水質や底質がヤマトシジミの生息場所として良好であり、全国有数のしじみ漁場。地域の漁業者は、4年程度成長(殻長が15mm以上)させてから漁獲するなど湖内のしじみを持続的に生産する取組を継続してきた。平成5年には、しじみ専用の市場となる小川原湖地区卸売魚市場が開設され、湖内で漁獲されたしじみの一元的な集荷が可能となり、安定した品質のしじみを出荷する体制が確立。

入善ジャンボ西瓜(富山県)
ラグビーボールのような長楕円形のユニークな外見であり、果皮の色は濃く縞がはっきりとしている。平均重量が17~19kgと大きい。サッパリとした甘みが口の中で広がる。産地は黒部川によって形成された広大で肥沃な扇状地であり、砂質浅耕土であるため保水力が低く、多湿に弱く病害の発生しやすい西瓜を長期間生育し重く大きく育てることができる。産地では明治後期からジャンボ西瓜の栽培が始まり、ジャンボ西瓜の栽培方法が確立している。

香川小原紅早生みかん(香川県)
果皮の色が鮮やかな濃紅色であることが特徴の温州みかん。国内で栽培されている約100品種の温州みかんの内で最も紅いといわれている。糖度と酸度のバランスがとれ食味が良い。夏秋期に雨が少なく、日照時間が長い瀬戸内海式気候は、みかんの栽培に適しており、古くから高品質なみかんが栽培されてきた。香川県坂出市で偶然発見された「枝変わりの紅いみかん」を差別化商品として地域で育成。地域が一体となり品質向上に努め、消費宣伝活動に取り組んだことで消費者へ「美味しい紅いみかん」のイメージが定着し、特産品としての地位を築いた。

宮崎牛(宮崎県)
きめ細やかなサシを持ち、口に含むと広がるほのかな甘みと芳醇な香りが特徴。地域を挙げた高品質な肉牛作りが高く評価され、第9回(H19)及び第10回(H24)全国和牛能力共進会において総合優勝。第11回大会(H29)でも肉牛の部で内閣総理大臣賞を受賞。宮崎県は肉用子牛の生産が盛んであったが、昭和34年に肥育牛の飼料給与基準を策定するなど、肥育牛の振興策にも着手。県内種雄牛の改良にも取り組み、昭和48年には「宮崎方式」と呼ばれる県内種雄牛の一元管理体制を全国で初めて構築。

近江牛(滋賀県)
融点が低い不飽和脂肪酸であるオレイン酸を多く含んでおり脂質の口溶けが良い。約400年前から生産が続く最も古い銘柄牛のひとつであり、日本の牛肉食文化への貢献や肥育技術の高さから日本三大和牛とも称される。江戸時代は牛肉食が禁止されていたが、彦根藩は将軍家への献上のため、唯一、牛肉の生産が許されていた。琵琶湖の豊かな水に恵まれ稲作が盛んであったことから、稲わらを中心に給餌する肥育技術が発達。大正時代から肥育振興策が行われ、昭和26年には、日本初となるブランド牛肉振興団体「近江肉牛協会」を設立するなど、日本でも最も古くから和牛生産に取り組んでいる。

辺塚だいだい(鹿児島県)
ダイダイとは異なる系統の地域固有の香酸柑橘類。果実は、ダイダイに比べて小ぶり。果皮は、薄く滑らかでライムにも似た独特の香りがある。果汁歩合は50%前後と豊富で、やわらかな酸味とおだやかでふんわりとただよう香りがある。「辺塚だいだい」の名前の由来である「辺塚集落」は、山と海に囲まれ以前は周囲から隔絶された地域。この地に古くから自生している地域固有の香酸柑橘で、地域限定の特産物として、町外への苗木持ち出しを禁止し、この地域で守り育てられている。

鹿児島黒牛(鹿児島県)
肉質はきめ細かく柔らかい。霜降りのバランスが良く、融点が低い不飽和脂肪酸を含むため、とろけるような食感。統一的な指導方針のもと、飼養管理技術や種雄牛の改良を継続して推進してきた結果、第11回全国和牛能力共進会(H29)において、最優秀枝肉賞を受賞し、総合優勝。昭和37年より種雄牛の県有化を進め、昭和60年に鹿児島県種雄牛協会を設立。飼養管理マニュアルを作成・普及するとともに、研修会を毎年開催するなど、県をあげて生産技術の向上に取り組んでいる。昭和61年に「鹿児島黒牛」としてブランド化。

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