カメムシに特異的な免疫の仕組みを発見

カメムシ

 農研機構は25日、これまで知られていない新しい昆虫の免疫機構の一端を、チャバネアオカメムシで解明したと発表した。この発見により、カメムシ目昆虫のみに効果を発揮する害虫制御技術開発への応用が期待される。

 近年の食や農業の安全に対するニーズの高まりから、特定の病害虫にのみ効果を発揮する選択性の高い農薬の開発が求められている。選択性が高い農薬とは、特定の病害虫に対してピンポイントで効果を発揮する農薬のことで、他の昆虫類や植物等には無害であることから、環境負荷が少なかったり、使用回数が少なかったりというメリットがある。そのような背景を受け、各研究機関では、それぞれの病害虫の生理機能などを解明し、そのメカニズムを妨げたり、無効にしたりすることで新農薬の研究開発を行っている。
 今回の研究ではカメムシ類昆虫が特有の免疫機構をもっていることを解明し、この免疫機構を妨げることで選択性の高い農薬の開発可能性が見出した。
 
 カメムシ類は農業の生産の現場において、非常に厄介な病害虫として知らており、ナスやピーマン、カボチャ、ナシ、コメなど多くの作物において被害をもたらしている。カメムシは果実部分から汁を吸い、カメムシが汁を吸った果実は形が変形したり、腐敗して落下したりする。そのため、カメムシへの対策は農業の生産現場において非常に重要と言える。

 昆虫類を含む多くの生物は体内に侵入した微生物などの異物を素早く認識し、迅速に排除して身を守る免疫という仕組みを持っている。昆虫の体液(血液)内の免疫に関与するタンパク質(主にPGRP)が細菌の表面にある物質(ペプチドグリカン) を認識すると、免疫応答が活性化される。
 
 今までの研究では全ての昆虫種が同じメカニズムで免疫を働かせていると考えられていたが、カメムシ類は他の昆虫類と免疫機構を持っていることが次世代シーケンサーを用いた比較ゲノム解析により明らかになっていたものの、その特定には至っていなかった。

 そこで農研機構はRNAiという手法を用いて、PGRPの働きを抑制した後に大腸菌を注射すると、チャバネアオカメムシの抗菌性ペプチドの生産量が減少し、免疫応答が低下することが明らかになった。

 この結果により、チャバネアオカメムシ既知のものに加えて、これまで昆虫の免疫に関与するとは考えられていなかったLysin Motifと呼ばれるドメインを含む細菌を認識し、免疫応答を活性化していたのである。

 Lysin Motifカメムシ目以外の昆虫からは見つかっていない。そのため、LysMを標的にすれば、カメムシ類だけに作用し、他の有用昆虫等に影響しない害虫制御技術を開発できると考えらている。

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