世界の穀物収穫面積(全体の1/3)の収量が 3ヶ月前に予測可能に

予測モデル

 農研機構はAPECと共同で、全世界で生産される主要穀物(トウモロコシ、ダイズ、コメ、コムギ)の3ヶ月後の収量予測をすることが可能になったと発表した。
ただし、収量予測が可能になるのは全世界の主要生産国を含む1/3程度となっている。

 近年、多くの国で穀物の輸入量が増加している。また、気候の変動によりトウモロコシ、ダイズ、コメ、コムギなどその年によって収量が変化し、輸入国において、流通価格が変動したり、特に発展途上国においては食料状況の悪化が発生したりしている。
 
 そのような背景を受け、各国がそれら諸問題に対応するためにも、自国だけでなく世界規模での収量予測が求められてきた。そこで農研気候では、韓国気象庁が所掌する気象機関であるAPECと共同し、トウモロコシ、ダイズ、コメ、コムギの主要穀物の収量予測を算出する研究を行ってきた。そこで今回、全世界を対象とする気温と降水量の季節予測データを用いた、収量変動(前年の収量に対して当該年の収量が多いか、少ないか)を予測する新たな方法を開発した。従来の方法では平年収量をベースとしていたが、前年の収量を基準にすることで、気象条件に由来する収量変動を捉えやすくなっている。

 その結果、トウモロコシ、ダイズ、コメ、コムギにおいては全世界の3〜4割程度の面積において、3ヶ月後の収量予測を算出することが可能となった。特にコメにおいては既往の研究モデルよりも更に約2.5倍の面積での可能になり、精度も向上している。
 また、米国農務省などの食糧機関が公表する農産物需要見通しは国別のデータを使用しているものの異常天候の影響を考慮してないため、今回の農研機構の研究と組み合わせるとより精度が増すと考えられている。

 今後より精度を向上させるため研究データを蓄積しつつ、2019〜2020年に向けた実用試験を実施していく。

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