AI(アグリインフォマティクス)農業の展開

AI

要約

1.背景・趣旨
2.これまでの取組と「AI農業」
3.農業分野における情報科学の活用に向けた具体的取組の方向
4.農業分野における情報科学の活用に当たって考慮すべき事項
5.今後取り組むべき事項

1.背景・趣旨

日本は、世界的に見ても相当に高いレベルの技術が広く普及 している。またそれにより、高品質の農産物が比較的低廉な価格で供給できるような農業が実現している。 このことは日本の農業の 強みのひとつでもある。

こうした技術の発展においては 「匠」と呼ばれるような熟練技術を 、 有する篤農家の存在が大きく貢献してきた。

しかし、日本の農業は高齢化が一層進んでいる状態で、後継者不足で優れた技術の継承が難しくなるのではないかと懸念されている。

また、篤農家の多くが高齢者であり、「匠技術」の伝承が急務となっている。

そこで、最近の情報科学等の発達により、これまでマニュアル化が困難であった先人の「経験」や「勘」に基づく様々なノウハウなどの、いわゆる「暗黙知」をデジタルコンテンツなどの「形式知」に置き換え、技術の伝承等に役立てようとする取組が他の産業分野で進められている。

2.これまでの取組と「AI農業」

農林水産省では、これまで「匠の技」の汎用化、マニュアル化等に取り組んできた。

しかしながら、こうした取組を進める中で、一見同じように農作業を 行っているにもかかわらず 「匠」が生産 すると上手に生産ができ、結果において他の農業者と明確に差が出るといったように、これまでの取組ではカバーできない領域が存在することが明らかとなってきた。また そのために、文字情報の形でマニュアル化することには限界があることも明らかとなってきた。

何故、差が出てしまうのか?

個々の農業者は、それぞれが置かれた条件下で、マニュアルに 照らしてそのときに最適と考える作業を「匠」に倣って実行するが 「匠」が当該作業を実行するに至った思考過程が明らかにできないため 「匠」と他の農業者の置かれた条件の差異や「匠」と他の農業者が行った作業との間に微妙な差異が生じる可能性がある。そうした場合、それらの差異が積み重なり、結果の違いが生じるのではないかと推測される。

解決の糸口。AI農業

「AI(アグリインフォマティクス)農業」とは、こうした最新の情報科学等に基づく技術を活用して、より高度な生産・経営を実現させる農業を指す。

当面は、マニュアル化が困難な農業生産の技術やノウハウ、農作物の状態、生育環境等に係る様々な情報を、一定のルール、フォーマットに 基づきデータ化し、多くの篤農家等の農業者を対象に、複数年次のデー タを蓄積する。これについてデータマイニング技術等を用いて解析することにより、農業技術の改良を目指す農業者等に対し、それぞれが目指す方向に沿って適時にアドバイスを行うコンピュータによる意志決定支援システムを中核に据えた農業生産技術体系の確立を目指す。

さらに、同システムについて、ITの活用により、経営に関連する様々な情報とも結びつけながら、経営管理に係る機能も付加し、農業経営 のマネージメントを支援するシステムを構築した上で、これらを協調させたシステムにより経営の継続した発展を可能とする、世界でも例のな い新しい農業の姿を目指す。

3.農業分野における情報科学の活用に向けた具体的取組の方向

(1)AIシステムの開発/データベースの構築・充実

AI農業を実現していくため、まずは中核となる農業技術に係る支援 ツール(AIシステム)を開発するとともに、AIシステムの運用に不 可欠となるデータベースの構築・充実を図る。

具体的な方法

①農業技術に係る支援ツール(AIシステム)の開発 ②のデータベースのデータを、最新のデータマイニング技術等を 用いて解析し、市況やコスト等の経営的側面も勘案しながら、農業者 等に対し適時的確な技術的アドバイスの情報等を提供するAIシステ ムを開発する。

②データベースの構築・充実 農業者による意志決定や農作業の内容などに係る情報や、農作物の 生育状態、生育環境に係る情報等、①のシステム運用に不可欠となる データについて、フォーマットやスペックを統一した上で、できるだ け多くのデータを収集し、データベースを構築・充実させる。 併せて、将来的な活用に向けて 「、 匠の技」を記録・保存するため のデータベースの開発も実施する (篤農家の様々な「技」の画像・ 。 動画記録等)

(2)AIシステムの応用分野の拡大

(1)で開発したAIシステムやデータベースについて、より一層の 利用拡大に向けて機能の充実・拡張を行う。

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具体的な方法

①農業経営のマネージメントを支援するシステムの展開 ITを活用し、経営に関連する様々な情報と結びつけ、農業者等の 経営判断に必要な情報を適時に提供できる、農業経営のマネージメン トを支援するシステムへの展開を図る。

②農作業等の自動化・無人化の促進 AIシステム及びデータベースについて、次のような分野への応用 等を図る。 ・ 植物工場の環境制御の自動化への応用 -5- ・ 「匠の技」をチューンした農作業ロボットの開発 ・ 「匠の技」計測ロボットの開発

③その他

AIシステムの開発の状況を踏まえつつ AIシステムの自給的 、趣味的作物栽培者 家庭菜園等。支援への応用についても検討する。

(3)データベースのさらなる活用手法の開発

(1)の②で記録・保存した画像や動画等のデータを解析し、A Iシステム等へ応用させるための手法を開発する。

4.農業分野における情報科学の活用に当たって考慮すべき事項

AI農業研究会における検討の過程において、外部有識者等には、今後 農業分野において情報科学を活用していく際に考慮すべき事項として、次のような意見等をいただいた。

・ 農家の高齢化・減少の実態を踏まえ、篤農家の持つ優れた「匠の 技術」等を1~2年程度の短期間内にデータベース化していく必要 がある。

・ その際、篤農家には農作物を見る独特の勘があり、どこか特別な 「譜」 を見ていると推測される それが何であるかを把握した上で 収集するデータを判断する必要がある。

・ 農業者には科学的知見としてまとめた技術スキルスタンダードが 重要である。同時に、技術面とつながる農業経営のスキルスタンダ ードを作るべきである。その際、経済産業省の中小企業向けのスキルスタンダード等も参考にしながら、国でプラットフォームを作る べきである。

・ 作物の品質を高める手法として 水 にこだわる農家もいれば 、「光」にこだわる農家もいる。多様なニーズに応えるシステムのあ り方を検討すべきである。

5.今後取り組むべき事項

・AIシステムの研究開発

・実用化のロードマップの作成

・プロトタイプのシステム開発

・データベースのスペック等のつめデータ取得を依頼する農業者の調査

今後、AI(アグリインフォマティクス)農業が展開されていくことで、社会にどのような影響を与えるのか注目されています。

参考

http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sosyutu/sosyutu/aisystem/aisystem.html

2 件のコメント

  • 読んでも何がコア技術で何がアシストシステムなのかが全くわからない。匠の技など土壌が違えは全く役に立たないことは農業者なら誰でも知っている。農業技術者として「なるほど!」と思える内容が無いと思ったのは私だけだろうか。

    • コメントありがとうございます。
      今回は先ず広く知ってもらうという意図で記事を書いています。今後より深掘りした情報や事例などを書いていこうと思っております。有機栽培のイネつくりなど多くの著書をお持ちの小祝さんからコメントを頂けたことはとても刺激になります。より多くの方にきちんとした情報を知ってもらえるよう記事を書いていきますので今後もご指導ご鞭撻賜れますと幸いです。

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