フラワーアレンジメントが高次脳機能障がい者の記憶力向上に効果

フラワーアレンジメント

 農研機構と茨城県立医療大学は、事故や脳卒中などにより認知機能に障害を負った高次脳機能がい害がフラワーアレンジメントを利用した認知機能の訓練(SFAプログラム)を実施すると、記憶力が向上し、その効果が3ヵ月間保たれることを明らかになったと発表した。

 2016年の厚生労働省の調査では、高次脳機能に障害を負った人は全国で約32万7千人と推定されている。高次脳機能障害とは、記憶や注意、言語などの認知機能や社会性が低下し、生活に支障をきたしている状態を指す。高次脳機能障がい者が日常生活で自立し、社会復帰するためには、症状に合った認知リハビリテーションが重要となる。

 そこで農研機構と茨城県立医療大学は2010年にフラワーアレンジメントを作成する作業を通して認知機能の訓練を行う手法(SFAプログラム)を開発した。フラワーアレンジメントの作成過程では、視空間認知能力や記憶力、注意力など様々な認知機能を要するため、認知リハビリテーションに適していると考えらている。SFAプログラムでは、利用者が吸水スポンジに付けた○や△の印に順に花材を挿して、パズルを組み立てるようにフラワーアレンジメントを作成する。

 同手法を利用した認知リハビリテーションの効果と生花による心理面への効果を臨床研究によって検証し、統合失調症患者の視覚性ワーキングメモリ能力が向上すること、さらに生花を利用することで意欲が高まり、他の訓練法に比べて参加率が上昇することを明らかになった。SFAプログラムに参加した16名の被験者では、記憶テスト得点が平均12.7点から23.3点へと有意に向上し、非参加群と比べると4割以上得点が高くなるという結果を示した。さらに16名中追跡調査した9名では、3ヵ月後もテスト成績の向上効果が維持されていた。今後、SFAプログラムは高次脳機能障がい者の認知リハビリテーション手法として、その効果が期待される。