国産サツマイモから油溶性抗酸化成分「植物リポフェノール」の実用化に成功

さつまいも

「ヒトと地球をもっと綺麗に、ずっと綺麗に」をスローガンに、植物を独特に活用した化粧品原料の開発とOEM製造を行う株式会社サティス製薬(代表取締役:山崎智士、本社:埼玉県吉川市)は、茨城県ひたちなか市で生産されたサツマイモを活用した油溶性ポリフェノールの実用化に世界で初めて成功し、これを「リポフェノール/Lipophenol」と名付けたと発表した。リポフェノールは、脂質(リポ)とポリフェノールの複合体で、サツマイモ数十本から1gしか取れない希少な成分で、リポフェノールは生体利用性に優れるとされる低分子・油溶性の特長を有し、化粧品/食品成分として多彩なアンチエイジング効果が期待できる。

◆植物におけるリポフェノールの研究
 活性酸素種による疾病や皮膚の光老化との関連が明らかとなり、植物のポリフェノールによる抗酸化作用がますます注目されている。一般に、ポリフェノールの多くは配糖体として存在し、水溶性を示すことが知られている。一方、人体を構成する細胞や皮膚の角層は脂質層から構築されている。すなわち、食品と化粧品に共通して高い健康機能性を発現させるためには、生体親和性の高い油溶性成分が重要となる。しかし、これまで天然由来の油溶性ポリフェノール(リポフェノール)に関する報告はほとんどなく、自然界では希少な成分であると考えられている。そこでサティス製薬では、植物由来のリポフェノールの探索と生産技術の開発を目的とし、研究を進めてきた。今回、身近な野菜であるサツマイモを活用した、ユニークな植物リポフェノールの生産技術の開発に成功した。

◆準完全食サツマイモの秘められた能力に着目
 サツマイモ(Ipomoea batatas)は、食物繊維やビタミン類などの他、赤色果皮に含まれるアントシアニンや、美容とダイエットで注目されているクロロゲン酸といったポリフェノールも豊富に含むことから、準完全食品とも言われている。一方、食用とされる塊根は、サツマイモにとっては栄養貯蔵のための重要組織でもあり、高湿度に曝されると表皮下に薄いコルク層を形成して病害抵抗性を高めることが知られている。その関与成分の一つとして、フェルラ酸結合型のリポフェノールの存在が報告されている。しかし、サツマイモにおいてもリポフェノールは極めて微量であることから、これまで実用化には至っていなかった。今回サティス製薬は、サツマイモ塊根全体にコルク層形成能力を引き出す技術を開発し、「植物リポフェノール」の実用化に成功した。

◆サツマイモ産地と連携して原料開発
 茨城県は鹿児島県に次ぐサツマイモの一大生産地で、とくに地域名産品である干し芋の加工が盛ん。その一方で、サツマイモを収穫する際には、品質には全く問題がないものの、サイズが小さいため加工には適さないサツマイモが大量に生産されている。サティス製薬は、日本全国の天然素材から化粧品原料を開発し、品質と情報で付加価値を高め、地域を活性化させる「ふるさと元気プロジェクト」を行い、人間と自然に優しい製品の開発を目指している。そこで今回、低利用資源であるサツマイモ(小芋)をリポフェノール抽出用素材として活用した。

リポフェノール
グラフ

◆植物リポフェノールの構造特性
 抽出精製したリポフェノールをマススペクトロメトリーで構造解析すると、リポフェノールの主要構成成分はカフェ酸パルミチルとカフェ酸ステアリルであることが分かった。カフェ酸はコーヒーに多く含まれることからコーヒー酸とも呼ばれ、日常的に最も食経験の多い水溶性ポリフェノール成分の一つ。また、カテコール構造を有することから高い抗酸化性を示すことが知られており、クロロゲン酸もカフェ酸関連物質の一つ。今回実用化に成功したリポフェノールはカフェ酸結合型であり、植物オイルにも完全可溶な油溶性成分。

◆植物リポフェノールの機能性:抗酸化能と美白関連機能
 リポフェノールはフリーラジカル消去活性、スーパーオキシドアニオン消去活性、および過酸化脂質生成抑制作用を示し、抗酸化成分として有用であることが示された。さらに、リポフェノールの有効性評価の一環として美白関連試験を実施。リポフェノールをB16メラノーマ細胞に添加すると、①メラニン産生を抑制、②同じ有効成分濃度のアルブチンよりもチロシナーゼ活性を強く阻害、③メラニン産生関連遺伝子であるTyr(チロシナーゼ遺伝子)とMitf(色素細胞特異的でメラニン生合成酵素遺伝子の発現促進に関わるマスター転写因子)の発現を抑制、する。これらのことから、植物リポフェノールは複数の作用点を有する高性能な美白成分であると考えられる。

◆植物リポフェノールの今後の展望
 今回、天然では希少な油溶性ポリフェノール「植物リポフェノール」を、長い食経験のあるサツマイモから実用化することに世界で初めて成功。今後は、その高い油溶性を活かしたオイル製剤などを自社の化粧品OEM事業のオリジナル原料として顧客へ提案していく。また、さらなる有効性評価試験を実施し、高性能な共用原料(化粧品/食品)としても活用していく。