平成28年の荒廃農地面積は微減も再利用が困難な荒廃農地は増加

荒廃した土地

 18日農水省は平成28年の荒廃農地面積が全国で約28.1万haであったと発表した。このうち、「再生利用が可能な荒廃農地」は約9.8万ha、「再生利用が困難と見込まれる荒廃農地」は約18.3万haとなった。平成27年から荒廃農地面積は約1.1%減少したものの、再利用が困難と見込まれる荒廃農地は約14%増となった。大きな変化のあった都道府県では福島県で9%減、佐賀県で52%増となった。またエリア別で見ると関東エリアで荒廃農地が微減し、九州エリアでは佐賀県を中心に微増となった。

 農水省は、食料自給率の向上を図るためには、優良農地の確保と担い手への農地集積・集約化が重要であるとし、食料・農業・農村基本計画に基づいて、荒廃農地の再生利用に向けた施策を推進している。その施策の中で荒廃農地の荒廃状況、解消状況等の情報を把握することが必要不可欠であることから、「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査要領」(19農振第2125号農林水産省農村振興局長通知)に基づき、市町村及び農業委員会の現地調査等を実施し、荒廃農地の面積等を公表している。

▶荒廃農地とは
 荒廃農地とは下記のように定義されている。
現に耕作に供されておらず、耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地

 荒廃農地は更に、「再生利用が可能な荒廃農地」と「再生利用が困難と見込まれる荒廃農地」と2つに区分される。前者は「抜根、整地、区画整理、客土等により
再生することにより、通常の農作業による耕作が可能となると見込まれる荒廃農地」、後者は「森林の様相を呈しているなど農地に復元するための物理的な条件整備が著し
く困難なもの、又は周囲の状況から見て、その土地を農地として復元しても継続して利用することができないと見込まれるものに相当する荒廃農地」と定義されている。
 
 つまり、耕作がされておらず、重機などを入れて土地改良することで農業が再開可能な土地か、大規模な土地改良が困難(できた場合でも継続的な農業は困難)の2つによって区分される。

▶耕作放棄地と荒廃農地の違い
 荒廃農地と同じような言葉で耕作放棄地という言葉が存在する。耕作放棄地の定義は下記にようにされているが、より詳細な解説はこちらを参照して欲しい。
耕作放棄地
以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付けず、この数年の間に再び作付けする考えのない農地(農家の自己申告)

 そして耕作放棄と荒廃農地の違いであるが、ただしくは耕作放棄地の中に荒廃農地が含まれるという構図になっている。つまり、荒廃農地は耕作放棄地の1つである。耕作放棄地は下図のように分けられる。
耕作放棄地と荒廃農地の違い

 ただし、耕作放棄地のうち、耕作はされていないが荒廃しないように整備(草刈りや畦の整理など)が行われている場合は荒廃農地としてはカウントされていない。

▶荒廃農地に対する対策
 農家人口の減少や高齢化により荒廃農地は今後も増加していく可能性が高いと見込まれている。そこで農業委員会と市区町村が連携し、様々な施策を行っている。先ず、「再生可能」な荒廃農地については土地所有者に耕作意思があるか調査を行い、耕作意思がない場合には農地中間管理機構への貸付誘導や所有者または集落の共同活動による保全管理を行っている。「再生困難」な荒廃農地は農業委員会が速やかに非農地判断を行い、里山、畜産、6次化施設、再エネ施設など地域農業の振興に繋がるように農地以外の利用を促進している。

 今後耕作放棄地、荒廃農地が増えることが予想されるが、地元や農業委員会、農水省が連携し様々な対策が講じられている。

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1 個のコメント

  • 再生が困難と見込まれる荒廃農地化を食い止めるには「花木園化による新規参入者誘致」への提案をしたい。但し、先代のない新規参入者誘致には初期投資負担の軽減化に加え、収穫収入までの時間差の短縮化支援が欠かせません。農地バンクの借り上げに連携した「つなぎの事業者」による農業のあてがい支援が必要です。荒廃地再生は参入への「公平感」や高収益作物の栽培に拘っている段階ではないように思う。収益性は低くても粗放栽培でき、且つ、国土強靭化にも貢献できる花木園化が適するのではないかと考えます。同時に至近市街地居住による「通いの農業」容認も求められます。誘致対象を域内の農業者等から域外の農業の先代のない新規参入者への変換が今、問われていると思う。

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