3日、農研機構は縞葉枯病に強い粗飼料用イネ新品種「つきすずか」を開発したと発表した。これにより、縞葉枯病多発地域では栽培の難しかった従来品「たちすがた」の代わりに栽培が可能となる。
WCSとはホールクロップ・サイレージのことで、子実だけではなく茎や葉も一緒に専用の機械で収穫し、乳酸菌などで発酵させた牛用の飼料のこと。イネWCSは、水田を有効活用できるイネの利用法として注目されている。しかし、イネの籾は牛の消化性が悪くそのまま排泄される割合が高いため、栄養の損失が問題になっていた。また、WCSの調製には乳酸菌のエネルギー源となる糖が必要となり、籾を多く着ける従来品種ではイネの糖含有率が低いことも問題となっていた。
2010年にイネWCSとして「たちすがた」が開発された。「たちすがた」は糖含有率が高く、イネWCSとしては非常に有用であり、関東での普及が進んでいた。しかし「(イネ)縞葉枯病」には弱く、特に縞葉枯病多発地域の北関東では、縞葉枯病の発生を抑えるために農薬を散布するなどコスト面でも課題になっていた。
また「(イネ)縞葉枯病」はヒメトビウンカを媒介に発生する病害で、近年では全国的に広がっているという問題が顕在化していた。
そこで今回縞葉枯病に強く、「たちすがた」と同じく茎葉が多く、糖含有量の多い「つきすずか」が開発された。
「つきすずか」はほぼ茎葉で構成される地上部の乾物収量は173 kg/aと「たちすずか」と同程度で、また全体に占める籾の重さの割合は「たちすずか」の7.1%の半分以下の2.8%となっている。糖含有率は、従来品種「タチアオバ」の3倍以上とイネWCSとしての有用性を示している。
今後は従来品の「たちすがた」と同程度(600ha)ほどの栽培が見込まれており、縞葉枯病多発地域での栽培も期待されている。