農研機構は12日水分ゲートや開水路など農業水利施設の管理ノウハウを地図上に記録し参照できる「水利施設管理台帳システム」を開発した発表した。「水利施設管理台帳システム」を利用することで、記録をデータベース化し、施設の管理ノウハウや老朽化状況、ゲリラ豪雨などの災害記憶を将来に継承できる。近年の農業従事者の高齢化に伴い、水利施設の管理者も高齢化しており、管理ノウハウが継承されず管理が難しくなっている地域も存在、それを改善する可能性のある新しい技術である。
農業用水路等の農業水利施設では、水路の水位観測や分水調整等の日常の維持管理を担う職員の高齢化が進み、管理ノウハウの将来への継承が困難になっている。全国には農業水利施設を管理する土地改良区は全国におよそ4,700組織あり、その7割が受益面積300ha未満の小さな組織で、管理者の高齢化が進んでいる。
ある地域は専門の管理者はおらず、農業用水の受益者である農家が組合を作り自ら管理を行っている。その地域では組合委員が耕作面積に応じた年間料を支払い、年数回のメンテナンス(ゴミの除去、修繕など)に参加する。また、それ以外にメンテナンスや修繕に自主的に参加した場合、組合の積立金から日当が支払われる。しかし、前述の通り管理者の高齢化が進み、思うようにメンテナンスや維持や難しくなっており、組合に若い会員が加わってもノウハウが継承されないという自体が生じている。
そこで、農研機構では、農業水利施設の管理ノウハウや日々の管理日誌を記録し、地図上で参照できる「水利施設管理台帳システム」を開発した。農業水利施設の様子を現場で位置情報付きの写真や音声、メモ情報としてモバイル機器上のアプリに記録し、メールを送信すれば、事務所のパソコンソフトに自動で登録され、地図上で確認できる。
今後は文化財としても貴重な三重県の立梅用水土地改良区の農業水利施設で、実証実験を行い改良を行い年内の販売を目指す。販売価格はおよそ5万円程度となる見通し。
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