従来のDNAマーカー選抜では柑橘類の生育後の果実の重さや色などを予測することは難しかったが、大量のDNAマーカー情報から予測をする「ゲノミックセレクション」ではそれら情報を芽生えの段階で予測することに有用であると発表した。本研究は農研機構、東京大学、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所は共同で行った。
今まで柑橘類の生育予測を行うためにDNAマーカー選抜が有用とされてきたが、DNAマーカー選抜の利用は少数の遺伝子が関わる特性(無核性やウイルスへの抵抗性など)に限られており、生育後の果実の重さ、色、硬さ、皮の剥きやすさなどの生産果実として重要な情報を予測することはできなかった。
そこで農研機構、東京大学、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所は共同で大量のDNAデータ情報を利用した「ゲノミックセッション」が果実の重さ、色、硬さ、皮の剥きやすさなど予測することに有用であることを発表した。
柑橘類は日本における重要農作物の1つであるが、国内需要が低下している。特にみかんは耕作面積も減少していて1974年以降減少を続けており、消費量も1980年と比較する1人あたりの消費量も半分以下にまで減少している。
そのような背景を受け、新たな需要を喚起するために新品種の創出が求められてきている。新品種の育成において求める特性をもった個体が生育する可能性は5,000個体に1個体程度と可能性では0.02%となっている。また果樹の特性として発芽から結実までに数年かかるため、新品種の開発には長い年月を要することとなる。そのため発芽の段階で結実した際の、重さや硬さ、色などの特性が予測可能となれば新品種の開発までのスピードが格段に改善される。
家畜育種では大量のDNAマーカーから予測する「ゲノミックセッション」の有用性が注目されていたが、本研究はそれを柑橘類に対してその有用性を検証したものとなる。
DNAマーカーとは生物個体の遺伝的性質、もしくは系統を特定するための目印となる個体特有のDNA配列のことで、ゲノミックセッションは既存の品種や系統、これまでの育種における交配で得られた個体などを用いて、品種間における特性の違いと大量のDNA配列の違いとの関係を数式で表した予測モデルを作成し、本モデルを新たに養成した個体に適用しDNA配列から特性を予測するもの。
すなわち、大量のDNAから予測モデルを作成、芽生えの段階で得られるDNA情報と照らし合わせることで、どのような果実が結実するかを予測することができる。
今後はゲノミックセッションでの予測精度を高めるためにDNAのマーカー数を増やし、より詳細な情報を得られるように展開していく。