農研機構は、平成29年7月九州北部豪雨災害への技術支援の一環として現地調査を実施し、ため池が洪水被害を軽減することに貢献したと調査結果を発表した。上流からの土石流を池敷に貯留し下流の被害軽減に貢献したため池も多く確認された。
7月に九州北部で豪雨が発生し、福岡県朝倉市と大分県日田市でため池や河川が氾濫し大きな被害をもたらした。それを受けて農研機構は九州農政局と福岡県と合同し、福岡県朝倉市のため池13ヶ所を調査した。
ため池は元々農業用水を確保することを目的に人工的に造成され、全国に20万ヶ所以上のため池が存在する。そのうちの約70%は江戸時代前後に造成されたもので、従来農業用水の確保が主目的であるが近年造成されるため池には洪水を安全に流下させる「排水吐」が設けられるなど、洪水対策などの役割も果たしてきた。
しかし今回の豪雨では一部報道で、ため池に流木がたまり排水がスムーズに行われず、貯まった水が一気に流れ出てむしろ被害を拡大したと報じられていた。実際一部のため池では決壊等の重大な被害が発生したが、調査の結果では、上流からの土石流を池敷に貯留し下流の被害軽減に貢献したため池も見られ、ため池が下流部の被害を軽減したと発表した。
例えば今回多くの被害が報じられた福岡県朝倉市山田地区の鎌塚ため池においては、上流からの土石流や流木と山の神ため池の決壊土砂が鎌塚ため池の貯水池に流入し、設計より高い貯水位となったが、決壊を免れ、その下流にある、山田地区への土砂・流木の流入を大きく軽減したと考えられる。
ため池は農業用水の確保だけでなく、多面的な機能を有しており、例えば青森県鶴田町にある廻堰大溜池には日本最大の3連木造木橋があり景観の創造をしたり、多くの水性動植物の生育場所になったりと様々な機能を持っている。
今回も農業用水を確保することを目的に造成されたため池が洪水被害を軽減し、一部専門家の間からはため息の整備予算確保推奨を唱える者もいる。