19日農研機構は「巨峰」や「ピオーネ」の着色が困難な地域でも良好な着色が得られるブドウの新品種「グロースクローネ」を開発したと発表した。グロースクローネは種なしでの栽培も可能で、巨峰やピオーネとほぼ同時期に収穫できる極大粒品種となる。
地球温暖化による影響で西日本を中心に巨峰やピオーネの着色不良が多発している。このような着色不良果は「赤熟れ」と呼ばれる。ブドウ果皮の色素であるアントシアニンが蓄積することで色が徐々に濃くなる。これは強い日差しから果実を守るためと考えられ、カナメモチなどの幼葉が赤いのも、葉に多くのアントシアニンが含まれ強い日差しから細胞組織を守っている。ブドウの場合、気温は25°C前後で最もアントシアニンを蓄積するとされているが、25℃を超えると着色不良を起こしやすくなる。着色不良を起こすと市場の評価が低く安価で取り扱われることから、高温下でも着色が良好な大粒品種の開発が要望されていた。
また消費者からは食べやすさの観点から「種無しブドウ」のニーズが高い一方で、大粒かと種無し化におけるジベレリン処理の効果は品種によって異なり、大粒化しても種無しにならない品種も多く存在している。
そこで農研気候は、高温下でも着色し、ジベレリン処理により種無し化が容易な品種「グロースクローネ」を開発した。
名前の由来は「グロース」は「大きい、偉大な」を、「クローネ」は「王冠」を表し、それを合わせた品種名となっている。
グロースクローネは極大粒の紫黒色品種である「藤稔」と早生の赤色品種である「安芸クイーン」を交雑させて育成した品種である。夏季の高温下では巨峰やピオーネよりも濃い黒紫色になり、ジベレリン処理をした場合はそれら2種よりも大きな粒へと成長する(およそ20g)。また収穫時期は巨峰、ピオーネとほぼ同じで8月下旬頃が最盛期となる。ただし日持ちの期間では享保やピオーネよりも1日〜2日短いとされている。
今後は「赤熟れ」が多発している西南エリアでの栽培普及を目指す。苗木は平成30年秋から販売される予定。ただし、通年を通しの裂果が発生する可能性が高いため成熟期後半には定期的な潅水をするなど、極端な乾湿を避けるような土壌水分管理が必要となる。
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