今回紹介する農人は株式会社インユー代表取締役松浦愛さん。松浦さん2016年1月に「全ての人にオーガニックな暮らしを」というミッションのもと、株式会社インユーを設立した。オーガニック・ライフを提案するWebメディア「IN YOU」とオーガニック商品を専門に扱う「IN YOU Market」と運営している。「オーガニック」という言葉は広く認知される言葉となったが、オーガニックの言葉が先行してしまいその本質的なものがあまり伝わっていない。そこでオーガニックの専門家である松浦さんに話を聞いた。
上京し体調を崩したところからオーガニックに興味を持つ
松浦さんは北海道出身で、大学は京都にある立命館大学と生まれてから大学卒業まで比較的自然豊かな環境で過ごし、その時まではオーガニックなどにはまだ興味はなく、大学では国際系の勉強をしており語学などを学んでいた。当時はファッションやメディアに興味があり、卒業後はジュエリーメーカーに就職し上京。
初めての東京での生活、慣れない社会人生活が始まると徐々に体調を崩し始めた。「今まで北海道や京都など自然環境の良いところで過ごしてきた反動と仕事の忙しさもあり質を考えない外食や簡単な食事などで過ごしていたことが良くなかったです。」と松浦さん。
そこから自身の体調管理という観点から徐々にオーガニックに興味を持ち始める。転職、退職やりたいことを探す期間を経てIN YOU設立自らの体調を崩したことをきっかけにオーガニックに興味を持ち始めた松浦さん。環境を変えるために今まで勤めていたジュエリーメーカーを辞め、ネット系ベンチャー企業に転職する。
転職したベンチャー企業ではセールス、育成、マネジメントなど様々なことを経験。仕事としては忙しかったが、ベンチャー企業の自分で自由にやれる雰囲気と食生活の見直しにより体調は回復してきたという。そのベンチャー企業も約3年半で退社し、自分で本当にやりたいことを探すために1年半ほど無理のない範囲で仕事をしながら、IN YOUの前進であるオーガニックに特化したブログの立ち上げに従事する。
「やりたいことをしっかり見つけるためにブログの立ち上げに携わりました。当時は何もわかりませんでしたが、いろいろな人にアドバイスを頂き、ありがたいことに企業さんからお声掛けいただくことも増えIN YOUが収益化、そしていよいよ法人化しようという流れになったんです」と松浦さんは話す。
1年半の準備期間を経て法人化したIN YOU。現在40名以上のライターと共にオーガニックライフスタイルに関する情報Webメディアとして公開し、更にIN YOU Marketというオーガニック商品に特化したオンラインストアも運営している。
IN YOUの商品
Webメディアを運営し、講演会にも登壇したり本を出版したりと精力的にオーガニックライフスタイルの情報を発信し続ける松浦さん。またIN YOUではオンラインストアも開設しINYOUセレクトのオーガニック商品を販売している。日本で商品について「オーガニック」と書く、もしくは説明する場合には有機JASの認定を受ける必要がある。しかし、IN YOUでは有機JASの認定有無に関わらず製造工程、原材料名など聞いて自然栽培のものなども積極的に取り入れ、自分たちで商品をセレクトしているという。
「有機JAS認定の野菜でも実は農薬を使っている野菜もありますし、有機JAS認定を受けていないだけでJAS基準よりもっと厳しい基準でオーガニックな商品を作っている方もいます。だから製造工程や想い、産地などいろいろな情報を頂き取り扱うようにしています。」と話してくれた。
IN YOUの基準は正直言えばかなり厳しい。有機JAS認定やエコサート認定の商品でも成分などの基準を満たせないこともあるという。それは消費者にとって本当に良いものを購入してもらいたいという想いからそのようになっているそうだ。また、生産者やメーカーに対してもそのことをしっかり伝えるということもしている。
「基準に漏れてしまった会社さんにも漏れた理由をしっかり伝えています。消費者の思いとかフィードバックを伝えることでその商品や会社がよりオーガニック的にすばらしいものになれば良いなと思っていますし、それが日本のオーガニック市場をより良くするためのことだと思っているからです。」と松浦さん。IN YOUは消費者に良いものを伝えるだけでなく、生産者やメーカーにもその事実を伝えより良いオーガニック商品を作っている。
オーガニックに対する世間のイメージ
「IN YOUは全ての人にオーガニックな暮らしをということミッションに事業を行っています。日本はまだ欧米諸国と比べるとまだまだオーガニックに対する意識は高くないというのが現状です。オーガニックという言葉は一般的に使われていますが、先ずオーガニックがなぜ必要なのか?という説明から入っていかないといけないと思っています。メディアを通してオーガニックの必要性や素晴らしさを伝えていくことで一人でも多くの方がオーガニックを身近に感じられるようになるような、ボトムアップが図れれば良いかなと思っています」と松浦さんは話す。
世の中でオーガニックという言葉広く使われるようになったが、欧米諸国に比べると実際意識的にオーガニックな物を食べたり身につけたりしている人は少ないという。実際、松浦さんにうかがったところ彼女自身もオーガニックな生活を心がけるようにしているらしく、飲み物も常にペットボトルに入れた水を持ち歩き、お腹がすいたときもオーガニックなお菓子やリンゴなどを食べているという。話をうかがうとかなり徹底したオーガニックライフを送っているように聞こえる松浦さんだが、「私もオーガニックな生活をしているつもりですが、実は矛盾していることもあるんです」と話を聞かせてくれた。
自分の心に嘘をつかない
「今私は東京に住んでいます。今まで住んでいた北海道や京都に比べるとアスファルトも多いし、排気ガスや体に悪いと思われるような物質が多いと思っています。そういう意味では食べ物や化粧品、身につけるものは気を使っていますが矛盾しているんです。」と松浦さんは話す。
例えば、農業であれば有機栽培よりも農薬や肥料すら使わない自然農法、服も化学繊維ではなく無農薬で栽培されたコットンや綿を使用した服、化粧品も自然由来のもの、住む場所も都会ではなく排気ガスなどがほとんどない田舎・・・など全てオーガニックにしようとするとキリがない。
「徹底しだしたらキリがないです。そしてこだわりすぎれば、最終的には自らの選択肢を制限してしまい、むしろストレスになってしまうと思います。だから自分の心に嘘をつかないというレベル感でできれば良いと思います。」
松浦さんがおっしゃったのはこうだ。全てを完璧にしていこうとするキリがなくなってしまい、むしろそれがストレスになってしまい、それは本質的ではない。例えば、ランチは外食だけど夕飯は自分で作り添加物を出来るだけ摂取しないとか、朝の缶コーヒーを辞めて自分で豆を挽いてドリップした珈琲に切り替える、週末は田舎で過ごすというような人によってオーガニックライフの実践は様々あって良い。たまにコンビニでお弁当を食べても良いし、そこで人によって嫌だなと思ったり、別に良いかと思ったり感じ方は様々で、その時の気持ちに素直に従えば良いというのが松浦さんの考えだ。だからこそ、自分がストレスに感じない範囲、もっと言えば無理のない範囲で実践すれば良いと松浦さんは話してくれた。
「完璧にするのは難しいです。私達IN YOUがオーガニックについて何かを始めるきっかけを提供できるようになれれば良いと思っています。だからこそ誰でもできるような簡単なところからの提案など、ボトムアップを狙うということはそういう考えがあるからです。」と松浦さんは話してくれた。今後のIN YOU「IN YOUのミッションは変わらずより多くの人にオーガニックを身近に感じてもらえればと思って事業を展開していきます。」と話してくれた。
今後はIN YOU Marketを拡大することはもちろんだが、より生活に密接したオフラインへの展開、またオガーニック先進国である欧米や、今後日本と同じようにオーガニックに対する意識が高まるであろうアジア諸国などとも接点を持っていきたいという。今後ますます高まるオーガニックニーズ。そこでどのような事業を展開していくのか、IN YOUそして松浦さんの今後がとても楽しみである。
編集部あとがき
自らオーガニックなライフスタイルを送っている松浦さん。しかし人によってオーガニックライフの実践は様々なかたちがあって良く、自分自身が納得していればコンビニの弁当を食べても良い。大事なのは自分の心に嘘をつかないこと。と話してくれた時オーガニックな生活をしなければいけないというプレッシャーがふと解かれたようなそんな気がした。
オーガニックな生活をすすめる著名人は多くいるが、その中でも松浦さんはオーガニックな「物」という物理的なことだけではなく、自分の心に嘘をつかないという気持ちの取り組みであるという考え方がとてもナチュラルで話を聞いていて気持ちが良かった。今後も松浦さんの思い描くオーガニックな社会が楽しみである。
松浦愛
北海道札幌市出身
2016年株式会社インユーを設立
2017年11月に著書「はじめてのオーガニックガイドブック」を発表
株式会社インユー
http://macrobiotic-daisuki.jp/
IN YOU Market
https://inyoumarket.com/
関連記事
2018.01.15
有機JASに関する誤解と有機JASの本来の意味
2017.11.06
国内最大級オーガニックwebメディア「IN YOU」が初の書籍化『はじめてのオーガニックガイドブック』発行!忙しくても15分以内にできる!季節のレシピ&食養術