地球温暖化により北海道内でピノ・ノワールの栽培面積拡大

ぶどう畑の様子

26日農研機構は中長期的な地球温暖化の影響で、後志地方など北海道内有数のブドウの生産地で従来栽培の難しかった高級ワイン品種のピノ・ノワールの栽培が可能になったと発表した。北海道はワイン用のブドウ栽培としては北限にあたり、栽培可能な種類はツバイゲルト、ケルナー等に限られていたが、今回の研究結果によりピノ・ノワールの栽培が可能となり、北海道内でより高品質なワインが生産されることを示唆している。

 北海道はワイン用ブドウ栽培の北限と呼ばれており、栽培できる品種は寒冷な気候に適合する清見、セイベル13053、ツバイゲルト、ミュラー・トゥルガウ、ケルナー等などの品種に限られていた。フランスのブルゴーニュを原産とする高級赤ワイン用ブドウ品種であるピノ・ノワールは、国際的にブランド力の高い品種であり、比較的冷涼な気象条件を好むことから、北海道でも明治時代から着目され、試行錯誤しながら導入を試みてきたが、20世紀末までに導入は成功に至っていなかった。しかし21世紀に入ると北海道内ピノ・ノワールの栽培面積が広がっており、それに伴い1993年まで10ヶ所しかなかったワイナリーの数も2017年8月までに33にまでワイナリーの数が増えている。21世紀から、ピノ・ノワールの栽培が可能になった要因は分かっていなかった。

 そこで農研機構の研究グループは、北半球における高層大気場と海水面温度を用いた統計解析を行ったところ、1998年を境に北海道を含む北日本で気候シフトが生じたことを明らかになった。気候シフトとは気温や風などの気候要素が10年規模で不連続的に変化することで、この地域では1980年から2014年にかけておよそ1℃程度気温が上昇している。

 具体的には1980年以降、後志地方の余市町や空知地方の三笠市において4〜10月の平均気温が安定して14℃を超えており、これは欧米の研究で指摘されていた世界のピノ・ノワール産地と呼ばれている地帯の温度帯(4-10月の期間の平均気温で14-16°C)(以下、適温域とする)と一致している。また上川地方の上富良野町も、4-10月の期間の平均気温が1998年以降、14°C以上の適温域に入り、さらに2010年以降は、オホーツク地方の北見市や、石狩地方の札幌市藤野も栽培の適温域に入る傾向が見られ、今後北海道内でピノ・ノワールの栽培面積が更に広がる可能性を示唆している。

 ピノ・ノワールの栽培面積をより拡大できる気候条件が整ったことと、日本ワインの需要の高まりも相まって、今後北海道のブドウ生産農家、ワイナリーの収益拡大が期待される。また欧州系のブランド品種であるシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、メルロー等の栽培も図られていて、地球温暖化の良い影響を享受できるようになっている。