千葉大学倉阪研究室とNPO法人地域持続研究所は、 全国の農業委員会に対して、 ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)に関する実態調査を実施した。 その結果、 全国の約3割にソーラーシェアリングが広がっているが、 シイタケなど遮光率100%の案件や、 遮光率が高くても生育する特定の作物が選ばれる傾向があることなど、 太陽光パネルの下で育成する品種に課題があることがわかった。 【調査報告書 http://ur0.biz/Q7zd 】
調査の概要
調査時期:2018年10月
調査対象:一定の基準を超える農地面積を持つ市町村の農業委員会(沖縄県は全農業委員会)1465か所
調査方法:郵送アンケート調査 回答数:1174件(回答率、 80.1%)
(本調査の企画は、 倉阪研究室の学生(法政経学部3年)4名が行い、 千葉エコ・エネルギー社へのヒアリングの上、 調査項目を作成した。 調査費用は、 千葉エコ・エネルギー株式会社からNPO法人地域持続研究所に調査委託を行う形で賄った。 調査のとりまとめは、 倉阪研究室とNPO法人地域持続研究所がとりおこなった。 )
調査報告書: http://ur0.biz/Q7zd からダウンロード
調査結果のポイント
1. ソーラーシェアリングのための農地転用許可件数 は、 2018年8月末までで 1347件 。 全体の 29% 。
2014年(217件)と比較すると 4年間で6.2倍 に増えている。 【図1】
2.都道府県別の許可件数が多い順に千葉県(313件)、 静岡県(173件)、 群馬県(132件)【図2】
3. 遮光率が高くても(日陰でも)生育可能な品種が選ばれる傾向がある 。 遮光率100%の事例が見られる。
作付け作物の許可市町村数の多い順にミョウガ(65か所)、 サカキ(41)、 米(35)、 しいたけ(31)。
許可件数が多い市町村においてダイカンドラ、 レッドクローバー(紫ツメクサ)が集中的に栽培されている。
4.ソーラーシェアリングに懐疑的な農業委員会が多い 【図3】
「太陽光パネルの下で十分に営農できないと思う」(58.8%)
「わざわざ農地の上で太陽光発電をしなくてもいいと思う」(48.0%)
調査結果の考察(千葉大学大学院社会科学研究院 教授 倉阪秀史)
太陽光発電と営農が両立するようなソーラーシェアリングが広がり、 その結果、 耕作放棄地の解消や後継者の確保、 エネルギーの地域自給への寄与がもたらされることが望ましい。 しかし、 全国の農業委員会においては、 売電を主な目的とする「ソーラーシェアリング」案件に苦慮している状況が把握できた。
とくに、 ソーラーシェアリングと位置づけることが適切かどうか、 疑問がある例として、 ダイカンドラやレッドクローバー(雑草対策のため芝にかわるグランドカバーとして育成される品種)の作付けや、 しいたけや薬用ニンジンなど遮光率100%の品種の作付けがある。 このように従来の作付け品種とは全く異なる品種が選ばれることも問題であろう。
今後、 国は、 営農に繋がらない「ソーラーシェアリング」案件を抑制する取組を進めるとともに、 国や県が、 ソーラーシェアリングとして推奨する品種と適正な遮光率水準などを地域ごとに示し、 健全なソーラーシェアリングを育成する取組が必要ではないか。